夏華大笑(久喜・正法院の花)

百日紅(サルスベリ

さるすべり裸木けものの肌をして 山口青邨

さるすべりという木を知ったのは福永武彦の「草の花」という小説だった。
葉を落し裸木となっているその木はごつごつとした細枝をどんよりとした冬の灰色の空に伸ばしている。主人公はサナトリウムで療養しており死と向かい合っていた。そんな彼が誰もいない広い荒涼とした庭で一人その木肌の不気味さに触れて一層死への不安と恐怖を増幅させている。
以来、好きになれないまま日が経ち、夏の青空に澄んだ濃紅色の花をつけている木がさるすべりだと知ったとき、それまでのイメージとの落差に呆然としたことを思い出す。
さるすべりは咲き散った枝先から再び芽を出し花をつけながら、台風シーズンの間を咲き続け、秋の半ばまで私たちの目を楽しませてくれる。だから百日紅と書く。
「さるなめり」「なめらき」とも古歌では詠まれている。
それぞれの木が紅色の濃淡をつけて咲き続ける。ここの花の色は薄紅色だった、これが真っ白だったら「百日白」と書くそうだ。

※※日記「日常以上旅未満」を投稿しました。お時間があったらご覧ください。

https://smcb.jp/diaries/8850405

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