「あさのあつこ」の日記一覧

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あさのあつこ の「野火、奔る」

★3.5  シリーズ12作目。9作目の「鬼を待つ」の続編。遠野屋の奉公人であるおちやが1年もして八代屋に強引に連れ戻されそうになった。更には弥勒寺前の武家屋敷の路地で昼間に町人が刺殺されているのが見つかった。そして遠野屋には、差波藩からの紅花を積んだ船が江戸に着かないという連絡が。そしてかの八代屋には、後を継いだ長太郎が仮祝言だけという不自然な噂。今回は、信次郎がこれらの事件を繋げ、謎解きをして…

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あさのあつこ の 「光のしるべ  えにし屋春秋2」

★3.5 久々の一気読み。 入口は縁を取り持つえにし屋の商売なのだが、この話はお初が引き受けた「5年前に3歳で行方不明となった子供探し」にからむミステリー事件である。 本所林町1丁目で醤油と味噌を商う「摂津屋」の弥之助とお常の夫婦から依頼された話。5年前にお常が3歳になる息子の平太を伴って縁者の隠居の還暦祝いに出かけた。深川佐賀町の薪炭屋・河内屋である。 この日は泊まりであったが、…

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あさのあつこ の 「渦の中へ おいち不思議がたり6」

★3.5 シリーズ6作目。30万部突破とある。 おいちは新吉と所帯を持った。場所は路地を挟んだ同じ菖蒲長屋。女房を亡くした巳助の出ていった後である。事件はこの巳助の係わる毒殺事件である。おいちが長屋を出ていく巳助が黒い霧に包まれるのを見てしまったのだ。油問屋・浦之屋で起きた食中毒事件に続く乳母の服毒自殺事件。その犯人は己だとして巳助が自供したのである。 おいちは父親の松庵を手伝いながら、…

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あさのあつこ の「乱鴉(らんあ)の空」シリーズ11

★3.5 木暮信次郎の八丁堀の屋敷が奉行所の取り方に襲われた。だが、信次郎はいなかったらしい。続いて伊佐治親分が大番屋にしょっ引かれた。信次郎が妬まれて何かの濡れ衣を着せられたのか、はたまた奉行所を動かすほどのお偉方の身辺を探ってしまったのか。 信次郎が登場しないために、話は深川森下町の清之助の小間物問屋・遠野屋と尾上町の伊佐治親分の飯屋「梅屋」が主とならざるを得ない。清之助は伊佐治の女房…

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あさのあつこ の 舞風のごとく

★3.3 シリーズ3作目、「飛雲のごとく」から6年が経過している。樫井透馬は小姓組番頭に就き、父で筆頭家老の信右衛門とともに執政会議に連なっている。山坂和次郎は元服して半四郎を名乗るが。妻はまだ迎えていない。新里林弥も元服して正近を名乗り、稲生仁左衛門の娘・弥生を嫁に迎えたが、流産の後、気鬱の病で実家に返した経緯がある。正近には兄嫁だった七緒が忘れられない。正近の兄で・透馬の剣の師匠である新里結…

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あさのあつこ の 星に祈る おいち不思議がたり5

★3.5 シリーズ5作目。 第2作で登場したおいちの実の兄・田澄十斗が2年半で長崎から帰ってきた。旅立ったのがおいち17歳の年だから今、おいちは19の夏ということになる。 十斗は藍野松庵のもとで修行することに、学んだことを実務でものにするためという。その十斗からの勧めで江戸に出てきた女医・石渡明乃の塾を紹介された。長崎から既に明乃に学ぶ美代と喜世もいる。 香西屋の伯母・おうたからは飾り職人の…

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あさのあつこ の 「花下に舞う」 弥勒シリーズ10

★3.5 相生町の口入屋の夫婦が何者かに惨殺された。2人は何かにひどく驚いた顔で死んでいる。口入屋は裏で阿漕な金貸しをやっており、それが恨みを買ったのか。遠野屋の手代・弥吉が事件に巻き込まれ、清之助も関わることになる。 今回は信次郎が母・瑞穂を思い出すことが、キーとなる。伊佐治親分が現場の舞扇から「亡くなられた母上の瑞穂さまは舞の名手だったそうでやすね」と語り、信次郎が命日に墓参に出かけたこと…

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あさのあつこ の えにし屋春秋

★3.5 2つの物語。えにし屋は人と人とを結ぶ縁を取り持ったり、縁をきってやるのが商売。雷門ちかくの料理屋・亀屋の裏手にひっそり建つ仕舞屋で、お頭の老人・才蔵と女に化けた22歳の初、7つの太郎丸、通いの女中・舟で運営している。初の外見は〈深川随一の芸者か吉原の頂点に立つ花魁だった〉とも言われる女っぷり、男とは誰も疑おうとはしない。 材木問屋の子に生まれた初だが、幼い頃に夜盗の〈冥鬼丸(めいきま…

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あさのあつこ の 風を結う 針と剣 縫箔屋事件帖2

★3.3 シリーズ2作目。 おちえも17歳。そのおちえを診た町医者・宗徳が毒で不審な死に方をした。更には弟子の医者が刺殺された。すべては縫箔屋「丸仙」の新入り・一居の顔を見て怯えたことに始まる。 事件を担当するのは仙五朗親分。事件の謎解きと、閉門となっている榊道場の再開話が織り込まれる。 おちえの母親・お滝の口喧しさは今回も強調される。あのシリーズのおうた同様に作者自身が若い娘とのやりとりを…

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あさのあつこ の 人を乞う 天羽藩シリーズ3

★3.5 天羽藩シリーズの3作目。 《これまでの経緯》美鶴と柘植左京はふたごの姉弟、父の斗十郎が柘植の娘に生ませたもの。美鶴のみは当時、子の無かった正室であった藤士郎の母・茂登子が引き取って育てたもの。五馬は出世を餌に藤士郎の追手を務め、最後は藤士郎の刀に敢えて身を晒した。 母や姉・美鶴の住む砂川村に帰ってきた伊吹藤士郎に登城の命が。美鶴のかつての夫・今泉宗太郎を烏帽子親に元服した。 だが藤…

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あさのあつこ の 飛雲のごとく

★3.5 「火群のごとく」から9年、やっと動きだした小舞藩(おまいはん)6万石。といっても物語は「火群のごとく」から2年経過しただけ。 新里林弥(にいざとりんや)16歳の元服から始まる。林弥の新里家は、代々勘定方の家柄で、15歳も年上の兄・結之丞は勘定吟味役を務めていたが、4年前の御前鵜飼の夜に政争がらみで斬殺された。筒井の麒麟児と称されていた兄が、刀も抜かず後ろ疵を受けていた。そのため家禄は…

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あさのあつこ の 烈風ただなか

★3.5 「薫風ただなか」に続くシリーズ2作目。 間宮弘太郎の普請方組屋敷の近くで死体が発見され、それを目撃したと思われる隠居の老人も川で溺死していた。死体は発見されず、老人は事故死とされた。 この2つに疑問を持った新吾に父の鳥羽兵馬之介が事件の詳細を知りたがる。家を出て友人の姉・巴と同居する父の不可解な挙動に、現藩主・沖永山城守久勝の密命かと推察するが・・。 事件を目撃したと思われる弘太郎…

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あさのあつこ の 木練柿(こねりがき)

★3.7 再読。弥勒シリーズ3作目。このシリーズの読者は皆、遠野屋がらみの事件ばかり起こるのはおかしいのでは。北町の定町廻り同心の信次郎はふだんは何をやっているのか。これでよく首にならずに続けられるものだと。そう思っているのではなかろうか。 今回はそれが連作形式で4話ものとなっているのも珍しい。「楓葉(ふうよう)の客」では遠野屋の女中頭・おみつへ近づく盗賊一味の物語。「海石榴(つばき)の道」で…

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あさのあつこ の 夜叉桜(弥勒シリーズ2)

★3.5《再読》シリーズ2作目。 物語は3つの流れ。1つは連続殺人事件、商売女が次々と喉を抉られる。もう1つは良人の仇討に江戸へ出てきたという女。3つ目は清之介の前に兄・宮原主馬が現れた。 信次郎の上がった女郎屋の女は菊乃といい、赤子の娘・駒代を抱えながら境田伊織という男を追って江戸へ出た。娘を隣に預け生きるために自前の通い女郎で稼ぐ。 信次郎と伊佐治の追う女郎殺しの3人目の犠牲者は遠野屋の…

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あさのあつこ の 弥勒の月

最新勘の「鬼を待つ」に登場の源庵が「清之介の妻・おりんを死に至らしめ、信次郎に片腕を落とされた」とあるが、その経緯を全く忘れ去っている。この際、再読して信次郎と清之介のキャラ設定の源を探ってみることにした。 本作は作者が初めて時代小説を手掛けた作品で出版(2006年2月)から13年も経過したことになる。 《弥勒の月の事件》 本所二ツ目橋で深川森下町の小間物問屋・遠野屋の若おかみ・おりんが身投…

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あさのあつこ の 鬼を待つ

★3.5 弥勒シリーズ9作目。 大工の親方・慶五郎が首筋に5寸釘を突き通したおぞましい姿で殺された。珍しく信次郎の勘が働かない事件、伊佐治親分の記憶では3件目。 遠野屋が嵯波藩内で手掛ける紅花生産の話が語られそれが今回のキーとなっている。〈遠野紅〉と名づられた紅は3百両する極上品る。嵯波の紅事業に目をつけたのが大手呉服商の八代屋太右衛門、だがその太右衛門も5寸釘で惨殺された。 嵯波の闇の男…

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あさのあつこ の 地に滾る(たぎる)

★3.4 「天を灼く」の続編。 伊吹藤士郎は汚名を着せられ切腹した父の潔白を明かすため、証拠の書付を江戸に向かう学塾の師・御陰八十雄に託した。 己は腹違いの兄・柘植左京とともに囮となって脱藩し江戸へ向かう。深川の黒松長屋に住みついた藤士郎は左京とともに天羽藩下屋敷に出入りのある薪炭問屋讃岐屋の用心棒として働くことになった。 国許では左京とは双子の姉・美鶴と母・茂登子が農家の子供たちを相手に…

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あさのあつこ の 火花散る おいち不思議がたり4

★3.4 「ガールズストーリー」という引いてしまいそうなタイトルで始まった本シリーズも4作目。 仙五朗親分をキーとした2つのスピンオフ作品もある。 「かわうそ」と「風を繍(ぬ)う」 今回はおいちに最後で「女のための養生所」をと言わしめた2つの赤子の出生にからむ物語。 刺客に追われる女は産気づき、おいちか取り上げることに。お家騒動のからむ展開は先も読めるが、最後の守り刀で・・。もうひとつは商家…