さんが書いた連載百人一首の日記一覧

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[三十六歌仙] 撰者、藤原公任から

先日、新宿区の須賀神社で三十六歌仙絵というのを見ました。 今度、ウォーキングイベントにするということもあって 三十六歌仙を一人一人掘り下げていくことにします。 今回は、前段階として、三十六歌仙とはなにかという事と その撰者、藤原公任(きんとう)について ■■三十六歌仙■■ 短歌の世界で大御所中の大御所 藤原公任(きんとう)が「三十六人撰」という本で紹介した優れた歌人たち これ以降、三十六な…

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[百人一首]93 世の中は。源実朝、その続き

世の中は 常にもがもな 渚こぐ あまの小舟の 綱手かなしも 世の中は常に変わらないでいてほしいものだなあ 渚を漕いでいる舟を綱で引いている様子を見ると とても趣深く心引かれるものだ の続き、行きますね。 ■■悲劇■■ 右大臣になったところまででしたね 鶴岡八幡宮で、お祝いのパーティーをしましょう 当日、鎌倉にしては珍しい大雪になりました。 大銀杏の後ろに、隠れていたのは公暁(くぎょう) …

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紀貫之、人はいさ~(続き)

人はいさ 心もしらず ふるさとは 花ぞ昔の 香ににほひける あなたのお気持ちは、さあどうか分かりませんが 古都奈良では、梅の花が昔と変わらずに香り、 美しく咲いて迎えてくれています。 ■■解説■■ 前回、紀貫之についていっぱい話しました 今日は、この歌についてです。 いさ、はどうでしょうという意味 ふるさとは、昔来たことがある場所という意味。 ここでは、旧都、奈良のこと 花は、ここでは梅…

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紀貫之、人はいさ~、仮名の大先生

人はいさ 心もしらず ふるさとは 花ぞ昔の 香ににほひける あなたのお気持ちは、さあどうか分かりませんが 古都奈良では、梅の花が昔と変わらずに香り、 美しく咲いて迎えてくれています。 予めお話ししますと いつもなら、人物の紹介に続き 歌の鑑賞へと続いていくのですが 今日は、大物過ぎます。 2回に分けさせてください 今日は歌については触れず 人物紹介のみです。 ■■紀貫之■■ 出たっ、超大…

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藤原興風、誰をかも~

誰をかも 知る人にせむ 高砂の 松も昔の 友ならなくに 年老いた私は、誰を長年の友人としようか 私と同じく年をとった高砂の松の老木さえ 昔からの親友ではないというのに ■■藤原興風■■ 藤原興風(ふじわらのおきかぜ)官位としては生涯低いままだったが 歌人としては高く評価された あの、紀貫之や凡河内躬恒(おおうこうちのみつね)といった スーパースターと 歌合わせ(歌を読み合って勝敗を決める大会…

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紀友則、久方の~

久方の 光のどけき 春の日に しづこころなく 花の散るらむ 日の光がのどかにさしている春の日に 桜の花は、どうして落ち着いた心もなく急いで散っているのだろうか。 ■■紀友則■■ 紀友則(きのとものり)は、紀貫之のいとこで、貫之より二十歳くらい年上 40歳を過ぎるまで大した官職につけなかった やがて天皇の行動を記録する内規という要職につく 文筆に優れていないと務まらない仕事だったので 文章力…

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春道列樹、山がはに~

山がはに 風のかけたる しがらみは 流れもあへぬ 紅葉なりけり 山の間を流れる川に、風がかけた「しがらみ(柵)」は 流れきらないで溜まっている紅葉だったよ ■■春道列樹■■ 春道列樹(はるのみちのつらき)ってまあ珍しい名字 祖先が、大和の春道天王社にゆかりがあったことによる 現在の奈良県天理市にある和爾下(わにした)神社のこと 位としても、歌人としても特に目立ったことはなかったものの 百人…

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坂上是則、朝ぼらけ~

朝ぼらけ 有明の月と 見るまでに 吉野の里に 降れる白雪 夜がほのぼのと明けていく頃 有明の月で明るいのかと思い間違うほどに 吉野の里に降り積もった白雪であることよ ■■坂上是則(さかのうえのこれのり)■■ 坂上是則は、蝦夷征伐の誠意大将軍、坂上田村麻呂(たむらまろ)のひ孫。 天皇の発言の記録係をやってます。 蹴鞠の名手でも有名です。 テレビで時々見るけど あんなこと良く出来るなあと思い…

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第18回 壬生忠岑、有明の〜

有明の つれなく見えし 別れより 暁(あかつき)ばかり 憂(う)きものはなし 冷ややかなそぶりの明け方の月が、空にかかっていたあの別れ。 それ以来、私にとって暁ほどつらく思われるものはありません ■■壬生忠岑(みぶのただみね)■■ これもまた、読みにくい漢字ですね。 それほど身分は高くなかったけど 歌人としては一流で この歌が醍醐天皇に気に入られたため 殿上の間にのぼることを認められた。 そ…

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第17回 凡河内躬恒、こころあてに〜

心あてに 折らばや折らむ 初霜の をきまどはせる 白菊の花 あてずっぽうに折ってみようか。 一面に降りた初霜で どちらがどちらか見分けにくくなっている白菊の花を。 ■■凡河内躬恒■■ 凡河内躬恒(おおしこうちのみつね)短歌の世界では紀貫之と並ぶ ひょっとするとそれ以上の大スターらしいです。 古今和歌集の撰者になってます。 ネットで調べても出てくる短歌の数の多いこと多いこと。 地位は高くな…

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第16回 源宗于、山里は〜、テレビがない

山里は 冬ぞ寂しさ まさりける 人目も草も かれぬと思えば 山里は冬こそ寂しさが増すように感じられることだ 人が訪ねてくることもなくなり 草も枯れてしまうと思うので ■■歌■■ 分かりやすい言葉ですが、さりげないテクニックが隠されています。 かれ、は、離れ、と、枯れ、の掛詞で、 一気に人の足が離れることと 草木が枯れることを表している。 さらに、上の句と下の句を倒置し 詠嘆の思いを込めてい…

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第15回 藤原兼輔、みかの原〜、顔を見たことない人に恋?

みかの原 わきて流るる いづみ川 いつ見きとてか 恋しかるらむ みかの原からわき出て流れるいづみ川の「いつ」ではないが いつ見た訳でもないのに、なぜあの人がこんなに恋しいのだろうか ■■藤原兼輔■■ 百人一首では、中納言兼輔 藤原兼輔は紫式部のひいおじいちゃんになります。 三十六歌仙の一人で短歌ではかなり有名です。 ■■見てないのに■■ 顔も見てないのに恋心が芽生える。 とても不思議な気が…

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第14回 藤原忠平、小倉山〜、えーっ見てないの?

小倉山 峰のもみじ葉 心あらば 今ひとたびの みゆき待たなむ 小倉山よ峰のもみじ葉よ あなたに心が有るのなら もう少しだけ、次の行幸(みゆき)まで、 散るのを待っていてくれまいか ■■藤原忠平■■ 百人一首では、貞信公となっています。 藤原忠平の事です。 3番目の摂政関白、超大物です。 お兄さんが藤原時平。 あの菅原道真を陥れた時平です。 走攻守3拍子揃ったイチローのように 3拍子揃ったス…

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第13回 菅原道真、このたびは〜

百人一首シリーズです。 このたびは、ぬさもとりあえず手向山(たむけやま) もみじのにしき かみのまにまに 今度の旅では、ぬさの用意も出来ぬままに、慌ただしく出発してきてしまいました。 ですから、この手向山でたむけるぬさと致しましては 今ここに見事に織りなされているもみじの錦を、私の捧げ奉るぬさとして、神の、みこころのままにお受け取りください。 ■■解説■■ この歌の詠まれた段階はまだ失脚前…

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第12回 在原業平、ちはやぶる〜、いよっ男前

ちはやぶる 神代も聞かず 龍田川 から紅に 水くくるとは 不思議なことが多かったという神代にも、 こんな光景があったとは聞いたことがない。 龍田川が、水を紅色にくくり染にするなんて。 ■■在原業平■■ 立ち分かれ〜の在原行平の弟、業平ですね。 男前と言えば、なんといっても在原業平。 伊勢物語の主人公、昔男のモデルです。 その伊勢物語の中に、高貴な女性と駆け落ちしようとして失敗する話がある。…

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第11回 在原行平、立ち別れ~、気骨のある堅実派

立ち別れ いなばの山の 峰におふる まつとし聞かば 今帰り来む 別れて因幡に行く私だが、その稲葉山の峰にはえる松のように 「待つ」とみんなが言ってくれるのを聞いたら、 すぐ帰るからね ■■送別会で■■ 在原行平は、在原業平のお兄さん 次回在原業平の予定なので、兄弟セットね 在原行平は、因幡の地に転勤が決まる じゃあ、一杯行きますかって事で 送別会が開かれる その時の歌がこれ いつでも戻っ…

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第10回 光孝天皇、君がため~

君がため 春の野に出でて 若菜摘む わが衣手(ころもで)に 雪は降りつつ あなたに食べてもらおうと思って 早春の野に出て若菜を摘んでいます。 そんな私の袖に、雪がひらひらと舞い落ちていますよ。 ■■解説■■ 若菜とは春の七草のこと。 1月7日に七草粥を食べて無病息災を願う習慣は江戸時代に広がった習慣だけど 原型はこの時既にできていた 元々は中国から伝わった宗教的行事、踏青(とうせい)というも…

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第9回 河原左大臣、陸奥の~、モテモテ光源氏

河原左大臣(かわらのさだいじん)、本名 源融(みなもとのとおる)です。 陸奥(みちのく)の しのぶもぢづり たれゆえに 乱れ初め(そめ)にし われならなくに みちのく特産の、しのぶもぢづりの、乱れ染めの模様のように 私の心も、ちぢに乱れ初めたのですが、一体誰のせいでしょうか ただひとえに、あなたのせいなのですよ ■■河原左大臣■■ 嵯峨天皇の子供で、仁明天皇の養子になる その後、臣籍に下っ…

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第8回 陽成天皇、筑波嶺の~。狂気の天皇

今回は陽成天皇です。 怖いです。 恐ろしいです。 筑波嶺(つくばね)の 峰よりおつるみなの川 恋ぞ積もりて 淵となりぬる 筑波山の峰から流れ落ちる男女川(みなのがわ)の水が 少しずつ溜まってやがて淵となるように 私の恋心も積もり積もって淵になったよ ■■陽成天皇■■ 9歳から17歳まで天皇として即位 ところが藤原基経に引きずり降ろされる。 光孝天皇に譲りなさい というのには訳がある …

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第7回 小野篁、わたの原~、地獄と行ったり来たり

わたの原 八十島(やそしま)かけて 漕(こ)ぎ出でぬと 人には告げよ 海人(あま)の釣り舟 広い海を、たくさんの島々を目指して漕ぎ出して行ったよ、と 都にいる人々には告げてくれ、漁師の釣り船よ。 ■■小野篁■■ 意外なところにエピソード満載の歌があるものです。 小野篁(おののたかむら)知らなかったなあ こんなびっくりするような人が人知れず。 百人一首では、最終的な位で、参議篁とされています。…