さんが書いた連載孫日記の日記一覧

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「おじいちゃんに会いたい」

椅子から立ち上がった。座る。また立ち上がる。 「トイレに行きますか?歩きますか?」 頷く。トイレの後、片方の腕をしっかりと組み、歩いた。小股にゆっくり歩く。 普段は何もせず、ただ斜め下を見ている。表情は絶望しているようにも、寂しげにも見える。家族はいるはずだが誰一人ホームに面会に来ない。この方も誰かのおじいちゃんなのだろう。 「おじいちゃんに会ってみたい」 お兄ちゃんと二人…

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「バアバ、こっちから行くよ」

娘と私で病院受診を分担した。弟クンはママ担当で、予防接種とかかりつけ医の2つの病院。お兄ちゃんはバアバ担当で近くの病院。 お兄ちゃんは熱で休んでいる間に保育園の健康診断があり、その日休むと各家庭で連れていかなければならない。 弟クンは朝からすこぶる機嫌が悪い。 「チックンやだ」 事あるごとに駄々をこねる。 お兄ちゃんの病院に行くとドアに午前中の受付は終了したと張り紙がありド…

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「キンモクセイが咲いた」

仕事先から娘宅に直行した。3人で食卓を囲んでいた。娘の咳は治っていない。 このままでは駄目だ、必ず明日は休んで受診して欲しい。 予想通りの返事が返って来た。 翌日早くに出勤した娘から、午後会社近くの病院に行くと連絡が入った。言ってよかった。 弟クンのお迎えを頼まれたので、迎えに行き、帰りはいつもの公園で遊んだ。 パパばかり目立つ土曜日の公園。弟クンは5~6歳の女の子…

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「二週間ぶりの帰宅」

田圃道に入った処で自然に深呼吸した。戦い済んで日が暮れて、だ。 弟クンは朝パパと登園する時、はっきり「バアバ、帰るまで待っててね」と言い、それ以上グズらずに出掛けて行った。 一日お兄ちゃんと絵を描いたりドラえもんを見て過ごした。 夕方弟クンが娘と帰って来たのは6時を回っていた。私は孫達が食べ始めるまで弟クンを抱っこしていた。 弟クンは何度も何度も「なんで帰るの?」と、聞い…

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「子供の留守番」

雨の中、傘を差して出た。寒い。11月の気温だと言う。 スマホが教えた方向に歩いて行く。遠い。 駄目だ。お兄ちゃんを連れて行く事も、ましてや一人で留守番させる事も。 3連休明けに私自身の受診のために娘に近くの病院を聞いた。お兄ちゃんはまだ休ませるので連れて行って迷ったらかわいそうと下見に出た。 やはり信号の所で迷い、前から来た女性に聞いて分かったが、大体10分。受診に一時間…

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「『最強のバアバ』発熱」

何だか耳の奥がジーンとする。まさか!ほっぺが熱い。 体温計を脇に挟んだ。 「みなさーん、最強のバアバにはなれませーん。37:2℃!」 「とうとうバアバにも移ったか」 葛根湯飲んでから暫くしてまた体温計を挟んだ。 「わお!37:0!下がってるよ。○○クン、バアバがこのまま体温が上がらなかったら、最強のバアバって呼んでね」 「いいよォ」 サッと入浴して言った、 「バア…

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「次は私だ」

お兄ちゃんが発症して二日目も、私が二人の孫をみることになった。パパは仕事で大事な局面を迎えていて休めないし、ママも休みが続いていた。受診は土曜日、パパと私が一人ずつ違う病院に連れて行く。 出勤した娘からラインが来て、半日で早退し受診するとの事。ホッとしたがお兄ちゃんがまた熱が高い。カロナールが効いている間だけ37度台になるが、ぐったりしている。起きるのも辛そうで、一度はおんぶして階段を登っ…

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「お兄ちゃんが発熱した」

右側に寝ている弟クンの額に手をやる。平熱だ。次は左側に寝ているお兄ちゃんの額に触った。熱い。 咳が酷くて隣の部屋で寝ている娘は、先程咳で下に降りて行き、戻って来たばかりだ。起こさないように下に降りて体温計を持って来た。スマホの明かりで見た。38、8度。 もう一度下に降り、ビニール袋に氷を入れ濡らしたタオルにくるんだ。お兄ちゃんの額に当てる。ごめんね、お兄ちゃん。ぐったりしている姿を見…

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「最強のバアバにも、いいバアバにもなれない」

「バアバは下に行ってお花見て来る。一緒に行く?」 「行く!」 二人して言う。パジャマ姿のまま3人で玄関の外に出た。 「バアバ、おっきくない!」 弟クンは直ぐに生長するものだと思っていたらしい。 「急には大きくならないんだよ」 「バアバ、実がなってる!」 お兄ちゃんはキキョウを見て言った。 「そう見えるね、でもこれは蕾。これから咲くんだよ」 それから水やりをした。 …

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「生まれて初めて食べたリンゴ飴」

よくなったように感じた弟クンが、また悪くなった。熱が高い。 楽しみにしていたお祭りにも当然行けなくなったが、お兄ちゃんはお稽古事に行った帰りにパパと寄ってきたと、クジで当てた景品を嬉しそうに見せた。 お祭りのプログラムも持ち帰っていた。見ると駅前から神社から広い範囲が歩行者天国になっている。踊りや子供達の鼓笛隊演奏まである。 「バアバ、リンゴ飴もあったよ」 以前私がリンゴ飴を…

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「ショッキングピンクにしてよかった」

今まで週の半分は娘宅に来ていたが、私がやるのは孫の相手をする事だった。今回は全く違う。 娘の代わりをやる。主に食事作り(他はパパがやる)。それブラス弟クンの相手。 娘に食事の事で何か注文はないか聞くと「任せる」と言う。よほど具合が悪いのだ。孫が食べる物は私が普段食べている物とは違うし、孫達は気に入らなければ食べない。 スタートは朝食から。フランス料理並みにした。中身ではなく料理…

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「自由だァ」

「ピンポーン」 「あっ、またママからの指令だ」 「見るのヤダなあ。きっとママはダメだって言うよ」 「バアバ、いい事考えた。ウチにはない色もあるんだよって言えば」 「そうだね」 お兄ちゃんに背中を押されて再度娘にラインを送る。 「ダメだって。今ある色鉛筆を使い切ってからだってさ。それも大事だね。いいさ、バアバのを貸してあげるから」 私は娘が孫二人を病院に連れて行ってる…

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「涼しいよ!」

「涼しくなりましたね」 「涼しいですねぇ」 「今週一週間30度を越えないんですよね」 「30度を涼しいと感じるんだから笑っちゃいますよね」 ブランコの傍にいた女性と会話する。 「ストップ!」 「ハイハイ」 「おっきく!」 弟クンの腰を持ち、高く持ち上げると、ブランコは大きく揺れる。 「パパだ!」 「パパ、競争しよ」 お兄ちゃんはパパと駆けっこだ。二人とも…

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「大人の仲間入り」

先週末は台風接近で危険だから家にいてと娘から連絡があり、行かなかった(お陰で私は大山に行けた)。久しぶりの娘宅訪問だ。 5時半まで仕事してから出た。最寄りの駅を過ぎた辺りから段々暗くなった。 空が変化して行く夕暮れ時。高層マンションにポツポツ灯りが灯り、交差点には仕事帰りの人達が信号を待つ。法被や浴衣を着た店員が立っているのは格安居酒屋だ。 娘宅近くのスーパーに寄った。携帯で「…

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「ママ、公園に行こう」

娘が出掛ける準備を始めた。 お兄ちゃんが公園に行きたいと言うので、私が行くつもりでいた。 朝起きたのはお兄ちゃんが一番で、二番目は弟クン。娘はお休みだからゆっくり寝ていた。 お兄ちゃんが下に降りたので、私も行きたいが弟クンは玩具で遊び出した。気分転換に抱っこして窓のシャッターを開けるボタンを押してもらった。 「雲が一杯だね」 「クモ!」 何とか弟クンを抱っこして階段を…

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「今年最後のプール」

足裏が熱くない。この前来た時は信じられない程熱かった。 風が肌寒い。水から上がって来る若い人まで「サミィ」と言っている。来るまでは何時もと変わらない暑さだった。 「9月なのに随分混んでるね」 「最後だからね。このプールが今日最後なの」 前回来た時は水はお湯だったし、プールサイドのコンクリートは熱くて側溝の上を歩いた。 水に浸かっていた方が暖かい。空には青空高く筋のような…

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「どこ行くの?」

「バアバ、どこ行くの?」 まただ、3回目。同じ事を繰り返す。 「バアバはおウチに帰るの」 「なんで?」 「バアバは自分のおウチがあるの。帰って金魚に餌をやったり、お花にお水をかけるんだよ」 お兄ちゃんとママが帰って来た。 「どこ行くの?」 「○○公園のプールに行ってたんだよ」 こちらは一回で済む。 今までは目の前にある世界しか認識していなかった弟クンは、ここでは…

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「いいものが見えるよ」

私はボケ防止に昨日の日記を書いているから、昨日嬉しかった事は何だろうと考えた。婆様だ。退院して来た婆様は食事はもう普通に食べる。それより嬉しかったのは娘宅に向かう時だ。 5時半まで仕事し、自宅に帰らず直接娘宅に向かった。 涼しい。真夏の生暖かい風とは違う。 駅前には人が沢山いた。仕事帰りなのだろう。みんな帰る場所があるのだと思った。家族がいる人も一人暮らしの人も。 急…

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「爺様は蕩けるような笑顔で話し掛けて来た。」

「ボク、頑張って歩くんだよ」 自転車に乗ってやって来た爺様が自転車を降りて話し掛けて来た。 「駅に向かうバス停は何処かわかりますか?」 市民プールの帰りでバス停を探していた。すると娘が言った。 「あっ、向こう側だ!」 私達は橋を渡って左に曲がったが、右側にバス停の屋根が見える。 また歩き出した。爺様もそのまま付いて来る。弟クンは疲れたのか、バス停のコンクリートブロックに腰を下…

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「今日一番嬉しかった事」

「蝉の抜け殻ないかなぁ」 バアバはブランコから離れて、公園の端に向かう。木の幹を見上げてぐるりと一周。 弟クンはブランコから降りないものの、しっかり目で追っている。 「おっきく!」 「ハイハイ。行くよ」 弟クンの後ろに回り、腰の辺りを両手で掴み、グイッと持ち上げる。弟クンは大きく揺れる。 そうして抜け殻を探す行為をもう一度繰り返す。 「あっ、虫!1、2、3、4、5。5匹…