ー湯俣まで行くには、5日間ろくろく食べていない彼の涸れ果てたエネルギーの総てを上手に使わなければいけない。 両足の凍傷はさらに上部に浸蝕していったもののように思われた。動かない足は歯がゆいばかりだった。 新納友明が話しかけて来た。 そこには新納友明のかわりに、雪をかぶった木の根っ子があった。 10数年前に病死した新納友明の幻視を見た。 「おれは幻視幻聴なぞには負けないぞ。単独行できたえ上…
気象庁に新田次郎がいた。山も好きだっだ。司馬遼太郎がまだ産経新聞社にいた頃、新田次郎に講演を頼むために、気象庁を訪れた。新田次郎は私用の用件のため近くの喫茶店で話をしたと。新田次郎は年間の日程表をみて埋まっていると。空いている日があったが、風邪をひく場合もあるから、年に数日空けてあると ある時、司馬遼太郎が数学者の藤原正彦に会って、あの新田次郎さんの息子なら大丈夫だと語ったとか 数日前のテレ…