さんが書いた連載運動の日記一覧

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「最大限の準備」

「秋の虫が鳴いていますね」 蝉の鳴き声に混じり、リーンリーンと聞こえて来る。 「虫は真面目だねえ。こんなに暑いのに。」 市民の森で仲間と運動する時、最初は歩く。このお喋りが楽しい。二周歩いた後、走ると歩くを繰り返すが、走るところで私は遅れる。 何周かした時、ぴたりと鳴き声が止んだ。すると大粒の雨が落ちてきた。311の時、近所から小鳥が消えたのに似ている。洗濯物を出して来た! 雨は直ぐに止ん…

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「頑張れなんて言えない」

庭のタイタンビカスが咲いた。地植えにした白い方はとっくに咲き終わったが、鉢植えにした方は蕾を付けたのに咲かなかった。 大好きで大事にしていて、沢山蕾を付けたものに限って咲かない事がある。それが咲いた。 今日は仲間と走れる。最近行けない日が続いていた。早めに行こう。バイクで走り出した。寒い。 市民の森には一番乗りだった。直ぐに歩き出した。坂に来た。太腿の後ろが痛い。昨日の階段登りが効いてい…

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「久しぶりに月を見た」

もう一度玄関から外に出た。黒い雲が流れていくが、満月に近い。温かい色だ。 雨戸を閉めようとガラス戸を開けると、思い掛けず月が見えた。一体どれくらい見ていなかったのだろう。 今日は青空が見えるだろうと朝には思わせたが、結局空模様は怪しくなり洗濯物を入れてから家を出た。 今日の運動は自転車と決め、気分よくペダルを踏んだが、直ぐにマスクを忘れたことに気付いた。引き返すのは面倒だ。買い物は出来な…

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「突然警戒音が鳴り響いた」

ちょうど仲間とばらけて、自分のペースで走っていた。急に空の上から不快な警戒音がした。大音量だ。 人の姿を探した。草むらの中に女性が一人いて、草刈りをしている。声を掛けた。女性は音に気付いていないようだった。 「大地震が来ます」 あたり一面に響き渡った。隣は小学校。まだ夏休みには入っていないはず。静かだ。揺れも来ない。 よかった。失敗だとしても大地震など来ない方がいい。 また走り出した。一…

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「風が強い」52.9

朝からずっと風が強かった。昨日からだ。心配なのは百合。満開になった百合は、直径20センチはある花が一本に10個程も付いている。 一度では切れそうにない幹に鋏を入れた。案外スッと切れた。一つの花瓶に一本だけ入れて、リビングの窓際に並べた。 着替えて市民の森に向かう。ゴミの回収場所に、烏が数羽いた。ゴミ袋を破き、辺りに散らかしている。フェンスの上にも整列している。こちら側の電線にもいる。10羽は…

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「一人だから」53.2

体が重い。走るのは足じゃない、脳だ。今朝体重が増えていた。それできっと余計に重く感じる。 辺りを眺めながらゆっくりでいい。小雨程度の雨はここまで届かない。滑る処もあるから、先ずは様子見だ。 仲間がやっていたように200メートルを走り、あとは速歩で歩いてみよう。 三周目になり、このまま走り続けられると思った。 5周を目指すつもりが、もっと行ける気もしてくる。 私は一人じゃ続かないと仲間を…

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「年は忘れることにした」52.8

昨日と打って変わった青空。BSが「ワールドニュース」からいきなり「チャリダー」になった。今日は土曜日だ。 日焼け止めをたっぷり塗って、首が隠れる長袖を着た。下は裾がタイヤに巻き込まれないようにテープで抑えて。サングラスも手袋も忘れずに。 三段階のギアを一番キツい「3」にする。 川に来た。今日も大勢が走っている。男性が多い。 総武線最寄り駅まで26分。順調だ。総武線を越える跨線橋は迂回する…

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「いきなり額から汗が落ちた」52.8

半袖短パンで来てよかった。 林の中は木漏れ日程度だし、舗装されていない大地は衝撃が少ない。 一周目はゆっくり歩いた。小径は綺麗に掃かれている。いつも煩いカラスがまだ鳴いていない。小学校も始まっているはずだが、静かだ。 ここには山百合が咲く。 二周目から走った。ゆっくりだ。今までは早足で歩き、途中に走りを入れたが、その走りの部分を少しだけ早く走ろう。速く走るには大股にすればいい。 一周し…

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「『コロナ疲れ』の解消に」

「通りまで走るよ」 思い掛けなく先頭が言った。 それまで歩いていた。散歩とは違う速さだが、今までの歩きよりはゆっくりだった。 「今日はゆっくりなんですか?」 「そうでもないよ。」 「この前は付いて行けなかったんです。」 私は2周目に先頭に言った。それを聞いた先頭が判断したのだろう。 久しぶりに走るとキツい。 「歩いてちゃだめだって⚪⚪さんに言われてさあ。」 後ろのコーチが言う。コ…

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「こんな時には⚪⚪しよう」

「雨が降って来たよ」 私が出掛けると告げると息子が言う。結構大きな音だ。たった今まで降っていなかった。 「雨ごときに負けてたまるか。地震には直ぐビビるけど」 私はリュックを背負うところだった。 傘は軽いのがいい。回り道しよう。「薔薇館」が見たい。 塀の上からこぼれるように咲く薔薇はまだ五分咲きだ。近付いては撮れない。 道の向こうに鮮やかな色彩が見えた。公園だ。誰かがここに植えて十分世話…

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「普通の歩きになってるよ」

後ろに続く人の足音が聞こえなくなった。私は肘を曲げ両手を前後に力強く振る。 足音が聞こえて来た。走る仲間が追い越して行くのだろうと思った。 「普通の歩きになってるよ」 私の後ろを歩いていた人だ。 「歩いてると、どうしても遅くなる」 私は普通の歩きなどではない。速い。汗をかいている。 あと2周。背筋を伸ばし腕を振って大股で。 スタート地点に皆が集まっている。間隔は空けている。 「あ…

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「自然に間隔を空けた」

急いだ。なんせ翌日が休みだと思うと、ついつい夜遅くまでテレビを見てしまい、寝坊する。 久しぶりに走る格好に着替えた。いや、本当は最近は朝格好だけは走る格好に着替える。だが、近所をちょこちょこっと歩けばまだいい方で、絶対に走らない。 ジョギングクラブの集合場所には既に6,7人集まっている。コロナウィルスのせいで公民館は休みだから、一ヶ月以上会っていなかった。 直ぐに準備体操になった。間隔は自…

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「身近に来た新型肺炎の影響」

地域の歌の会に入り、二回目を楽しみにしていたのに、主催者から今月と来月は中止にするとラインが来た。市からの指示だという。 ジョギングクラブに行くと、会長が笑顔でこんなことを言う。 「皆さん、1メートルは離れて下さい」 市から昨日連絡があり、シニアが集まる会合や催しは新型肺炎の感染予防のため、中止にするか、開催するならお互い1メートル以上離れる事。ジョギングクラブはシニアが中心だ。 私達は…

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「東京マラソン中止って」

「東京マラソン中止だってね。」 同僚が言った時、何を言っているのだろうと思った。信じられない。 一般参加が中止で、一定の記録以上の力を持つ男女合わせて180人のエリート選手だけで行われるらしい。男子はオリンピックの選考会を兼ねている。 もちろん新型コロナウィルスによる肺炎の影響を考えて、だ。 参加料は返金しない。東京マラソンは国内選手が16200円、海外選手が18200円。 マラソン大会…

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「ここにおいでよ」

これが冬だ。風は強いし空気は澄んでいる。 夜寝付けない日がこれで3日。連続ではない。眠れなかった日の翌日はよく眠る。 枕元のスタンドに手を延ばして灯りを点ける。本を読む。本を読んでいる間はその世界が私のリアルだ。 自身の事を忘れていられる事をやろう。その一つが本。 どうも何をしても楽しくない。胸の奥に氷の塊を抱いているような辛さがある、なんて呟いては笑っていたが、この年で、この現実で、毎…

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「ゆっくりでいい」

また自主練習の日が休みだ。アラームはいつも五時。枕元のラジオを点ける。起きたくない。足元の湯たんぽが心地いい。 うつらうつらラジオを聞くでもなく聞いた。世界の何処かで誰かのために懸命になっている人がいる。 目覚めたら7時を過ぎていた。迷うことなく走る格好に着替えた。 市民の森に行くと既に仲間がいた。一人が犬を連れている。違う、長さを測る輪っかのような器具を転がしているのだ。 ここを走り始…

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「転んだ」

左足が何かに引っかかった。まるでスローモーションのように体全体が前に倒れていく。両手が綺麗に前に伸び、バンザイの形になった。 転んだのだ。幸いコンクリートではなく大地の上だ。打ったのは、右足の膝。土が付いている。分厚い手袋をしていてよかった。手袋も汚れている。 前を走るコーチが大丈夫かと寄って来る。後ろに続いていた先輩が声を掛ける。 「私もこの前転んだのよ。木の根っ子があるからね。」 私…

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「満タンにして」

「申し訳ありませんでした。今日2220円持参します。このエントリーがなければ、もう辞めるところでした。」 久しぶりのジョギングクラブ。仲間に立て替えてもらっているエントリー代金を持っていかないと。来年三月の葛飾ランフェスタ。行く前にメールした。返信は直ぐに来た。 「こないだのカラオケの時にお金を頂きました。大丈夫です。」 忘年会の日、昼間は皇居の大嘗宮だった。たった一杯の生ビールが効いた。…

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「冬の花」

窓から差し込む日の光がぽかぼかと背中を温める。 市民の森を一人で走った。疲れが抜けない感じで体が重い。 1周でもいい。台風で倒れた木が数メートルに寸断され、片付けられている。 ゆっくりだ。誰かと競争している訳じゃない。3周走っても汗が出ない。 5周でいいと思ったが、金網で隔てた隣の小学校が二時間目になったのか、大勢が走っている。皆半袖短パンだ。一時間走ってみよう。 森を出ると、生…

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「もう一台行ったよ」:手賀沼ハーフマラソン

湖に目をやる。白く点々と見えるのは白鷺だろうか。3羽とも首を水の中に突っ込んでいる。白鳥だ。 今度は蓮が枯れている。一度花を見に来たっけ。これもいぃもんだ。 間に合わないと思った途端に、周りの風景が飛び込んで来る。 前を行くラーメン屋のTシャツを着た太った男性に追い付きたいが、足が重くて距離が縮まらない。 第一関門までが遠い。五キロ地点で時間の表示があり、間に合わないと分かった。 何と…