「森真沙子」の日記一覧

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森真沙子 の 渡りきれぬ橋 柳橋ものがたり3

★3.2 慶応3年の5つの連作短編。 「夜の河」は虚弱の若様がせめてもの思い出にと舟遊びを。「春雷」は殺された庄内藩士・葛岡と馴染みの芸妓・瑞江の関係。「夕映えの記」は船宿・篠屋の板前・薪三郎と大森の海苔問屋の女将との関係。「雨が・」は薩摩の密偵・益満休之助が登場。「へちま」はラシャメンに売られそうになった芸妓・久米八。全編を通して閻魔堂という怪しい易者の先生が出没する。 世過ぎのために飛び込…

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森真沙子 の ちぎれ雲 柳橋ものがたり2

★3.2 シリーズ2作目。 慶応2年という幕末の押し詰まった時期での史実を、船宿で起きる事件にちらっと絡ませている。 山内容堂が柳橋に出没していた話、勝海舟と坂本龍馬の江戸でのかつての噂話、歌舞伎役者・田之助の足の切断話、薩摩藩士が市中で暗躍していた話、横浜の医師・ヘボンの話など。 「雛のお宿」では綾の父親と兄がある事件で失踪し生死も不明となったことを語っているが、これもこの物語のテーマなの…

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森真沙子 の 柳橋ものがたり 船宿『篠屋』の綾

★3.4 新シリーズ初作。6つの連作短編。 神田川の南岸にある船宿・篠屋に綾は目見え(試用)で住み込んだ。堅気で給金の高いところという希望に両国矢之倉の口入屋・内田に紹介された。 28歳の綾は3年前に夫を亡くし、父は医者をやっていたらしいこと、兄がいたことしかわからない。 時は慶応2年(1866年)9月のこと。家茂が亡くなりこれから次期将軍が決まるという頃、江戸市中は荒れている。内戦と凶作が…

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森真沙子 の 宗湛修羅記(そうたんしゅらき)―秀吉と利休を見た男

★3.5 博多の商人3傑の1人・神屋 宗湛(かみやそうたん)の活躍と苦悩を通し、秀吉の九州征伐(天正15年、1587年)から半島侵攻(天正20年、1592年)までの時代を切り取っている。 特に大友と島津の抗争により荒廃した博多の街の復興事業に尽力する。「太閤町割り」や「博多祗園山笠の流」などに今にその名を残している。先のブラタモリでも町割りの痕跡を紹介していた。 秀吉の狂気ともいえる唐入りの…

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森真沙子の「朝敵まかり通る  時雨橋あじさい亭3」。

★3.5 シリーズ3作目。文久3年(1863年)、あじさい亭の絡むほっこりした物語が続き、最後の2/5ほどは慶応4年(1868年)の3月へと移る。 主人公の山岡鉄舟が駿府の大総督府の西郷に会いに行く場面である。鉄舟が義兄・高橋謙三郎(泥舟)に推挙される経緯や、同行する薩摩の益満休之助を牢から解き放つ話などは面白い。 作者があとがきで「大川端生まれの江戸っ子で色道修行に励み、親戚中から絶縁され…

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森真沙子の「花と乱  時雨橋あじさい亭2」。

★3.5 シリーズ2作目。 時代は幕府から追われていた清河八郎が許され京へ登る文久3年(1863年)。 同行の鉄太郎は清河の変貌(将軍警護のはずが、天朝の直臣となることを画策)でまた江戸へ、清河は斬首される。 28歳で清河に肩入れする鉄太郎はちょっと判り難い時期ではある。隣家の高橋家との関係などは陣太鼓事件などを借りうまく描いている。 ニセ駱駝興行事件や鉄太郎の浅利又七郎への入門事件など、…

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森真沙子の「千葉道場の鬼鉄  時雨橋あじさい亭1」。

★3.5 「日本橋物語」「箱館奉行所始末」に続く新シリーズ。 若き日の山岡鉄太郎(鉄舟)を描く。茗荷谷の時雨橋のたもとにある「あじさい亭」と呼ばれる煮売屋、おやじの徳蔵と13歳の娘・お菜の営む店。息子は飛び出し、お采はもらい子である。 ここへ持ち込まれる鉄太郎を巡る事件をお菜の視点で語る。禿坂を上った高台の鷹匠町に山岡家はあり、妻のお瑛は鉄太郎の家政を無視した行いに・・。 隣はお英の実兄・…

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森真沙子の「海峡炎ゆ 箱館奉行所始末5」。

★3.5 シリーズ5作目にして最終巻。 慶応2年(1866年)10月、将軍家茂の死と長州征伐での幕軍敗戦の報がもたらされる。 そして大政奉還、幕府が崩壊していくなか、神戸、神奈川、長崎などの各奉行所が閉鎖されていくが、最後の箱館奉行・杉浦は、新政府に業務を引き継ぐまでの奉行所続行を決断する。 慶応4年閏4月26日に引き渡しが終わるまで続くのである。 榎本艦隊の上陸は更に半年後の10月とな…

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森真沙子の「幕命奉らず 箱館奉行所始末4」。

★3.5  シリーズ4作目。 この表紙は何だ―、最後の頁を読んでやっとわかった。幕府の御用船で去る小出奉行を、皆で凧を揚げて見送ろうというもの。 今回は5つの連作短編。水戸天狗党の残党騒ぎ、カラフトの領土問題、ギリヤーク人の遭難者、箱館の柳川鍋と新奉行の剣技、鈴蘭の毒による殺人事件。 時代は慶応2年(1866年)5月で終わった、いよいよ最後の奉行・杉浦兵庫頭の時代となる。 読者は幕末維新の…

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森真沙子の「密命狩り 箱館奉行所始末3」。

★3.5 シリーズ3作目。今回は支倉幸四郎が小出奉行の密命を受け、犯罪者を追って密林に分け入るという設定。 極秘の行動だけに馬、鉄砲、地理、通訳などの特技を持つメンバーを部下として選定し、大千軒岳を目指す。 時は慶応2年(1866年)、箱館奉行所も五稜郭に移っており、いよいよ風雲急を告げることになる。奉行も杉浦兵庫頭に交代する、最後の箱館奉行である。 次巻は榎本武揚や土方歳三が次々と乗り…

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お瑛の原点に戻った森真沙子の「桜追い人」。

「日本橋物語シリーズ」もこれで 9作目。これまでの作品は、ミステリー調あり、伝奇風ありと、色々な趣向を楽しませてもらったが、今回は本来の?姿に戻ったよう。 本職は日本橋室町で草木染めの反物を取り扱う呉服店、ここを舞台に出入りする客や、業者に関する物語を展開していくのが最初の出だしであった。 それが、作者の酔狂か、作風があちこちと飛び歩く姿から、まったくの別物作品かと思わせる巻もあった。それは…