「高橋義夫」の日記一覧

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高橋義夫 の 雪猫 鬼悠市風信帖5 

★3.3 シリーズ5作目。 今回はまたぞろ藩主の末弟の市之助様というのが登場し、用人の須貝甚兵衛が暗躍する。更には草と呼ばれる幕府の隠密が何代も住みついているらしい。 甘木湊という海船でにぎわう港町や熱浜という海辺の温泉なども登場するが酒田や湯の丘あたりがモデルなのかな。 鶴岡市の周平記念館を訪れたオフ会を懐かしく思い出す。 「地吹雪街道」では山形の地の雪のすごさも。長源寺の雪囲い作業の大…

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高橋義夫 の どくろ化粧 鬼悠市風信帖4 

★3.3 シリーズ4作目。今回の舞台は江戸、あの目黒祥天寺に埋葬されている藩主の弟・皓次郎の首が何者かに持ち去られたという。 題材は「撰集抄」の西行が高野山で野ざらしの人骨を集めて反魂の術を行い人を作ろうとしたというもの。 皓次郎の母・観照院を養父である御家人・金杉平左と得体の知れない鬼西行と呼ばれる修験者が暗躍する。 鬼悠市の手先となって動くのは前にも登場した奏者番の下僕・佐藤太兵衛と深…

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高橋義夫 の 猿屋形 鬼悠市風信帖3

★3.5 シリーズ3作目。 鬼悠市は足軽目付ながら奏者番の加納正右衛門の命を受ける。今回、加納は寺社奉行を兼ねるからという説明があった。 「雪鬼」では雪深い苦水村での探索という厳しい自然環境、「猿屋形」では赤湯という山深い湯治場が舞台である。作者らしい地方の描写がいい。甘柿がないとか、竹の種類によっては北限だとかも。 徒目付というまぎらわしい役目が登場するが、こちらは200石取りのれっきと…

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高橋義夫 の かげろう飛脚 鬼悠市風信帖2

★3.5 シリーズ2作目。前作より3年が経過し養子の柿太郎も15歳になっている。今回は分家の黒岩藩2万石に係る話。 藩主は本家の松ケ岡藩から養子に入った水巻忠正。黒岩藩の家老・日向杢兵衛が隠居させられ本家預かりとなって悠市が長源寺で警護することになった。 飢饉で米収が半減したなか、藩主の施政に抗して隠居を迫ったらしい。謹慎中の杢兵衛は江戸からのかげろう飛脚による連絡を待っているという噂が。 …

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高橋義夫 の 眠る鬼 鬼悠市風信帖1

★3.5 初作。文庫化時にシリーズ名を「孤剣竹林抄」から「鬼悠市風信帖」に変えたようだ。 鬼悠市は出羽、松ケ岡藩(水巻家)の7石(7両ともある)2人扶持の徒足軽の身分ではあるが、組の統制を受けない浮き組という特殊な立場。 普段は藩主の菩提寺・長源寺の竹林に住み、藩主特命の鳥籠を作り、その評判は江戸をはじめ京、大坂にまで届いている。 だが、悠市には他には知られていない陰の仕事がある。組頭を仲…

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高橋義夫 の 銀山仕置帳

★3.5 時代は江戸初期、関ケ原から10余年後のこと、奥州随一の院内銀山(昭和29年閉山)での物語。 出羽国雄勝郡の山の中、久保田藩(佐竹家)所有のこの銀山は全国有数の産出量を誇り大きな鉱山街を形成している。 越前朝倉家の遺臣で関ケ原では大谷軍で敗戦を迎えた助川十兵衛は、この地に流れ着き銀山奉行の梅津主馬助に拾われた。仕置番という役職を与えられ足軽30人を支配する。鉱山街全体の治安維持業務で…

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高橋義夫の「さむらい道 下 - 最上義光 もうひとつの関ヶ原」。

★3.5 下巻では義光が最上川下流域を制覇し、庄内地域を越後勢に侵された状態で秀吉の惣無事令を迎える。 以後は秀吉下での大名生活と、秀次事件へ巻き込まれての悲劇。最後は上杉戦、三成挙兵で東軍が去った後の直江兼続軍との死闘で物語は終わる。 伊達政宗の母・義姫は伊達家の物語では疑問視されることが多いが、最上家のために奔走しているのは興味深い。 最上川下流域を統一するまでは戦国物語として面白いが…

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高橋義夫の「さむらい道 上 - 最上義光 表の合戦・奥の合戦」。

★3.5 あの「御隠居忍法シリーズ」の作者。 上巻は最上義光(よしあき)の16歳~38歳(1583年)間を描く。 山形城で父の義守から廃嫡された義光は高擶城に幽閉されるが、一部の家臣団に担がれ帰城する。 父と弟を追い、周囲の諸城との抗争を繰り返す。巻末では国内の最大勢力・天童氏と雌雄を決す機も熟したという展開。 隣国の伊達氏、国分市、大崎氏などが大きな脅威となっているが、国内統一が急がれ…

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高橋義夫の「御聞番」。

★3.3 会津藩の密偵とされる大庭恭平の半生を描く。 33歳で7石2人扶持の下級藩士である恭平は、松平容保の京都守護職就任の先乗りとして京に入る。そこで暗躍する過激派・攘夷浪人の動向を探るためであった。 京では、「安政の大獄」で幕府の手先として動いた京都奉行所の与力、同心や、公武合体派の公家などが襲われ、天誅として次々とその首が晒された時期。 足利三代木像梟首事件に加わったことにより6年間…

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高橋義夫の「御隠居忍法10 - しのぶ恋」。

★3.3 シリーズ10作目で最終巻。 物語は前巻に続く。狸斎の親友・新野耕民の死にまつわる謎解きと敵討ちの物語。 笹野藩には藩主直属の「黒手組」という謎の組織があった。藩の改革急進派は旧弊の「黒手組」一掃の強硬手段に出たが・・・。 気楽に読めるシリーズだった。舞台を東北に設定し、主人公狸斎の前職を御広敷御庭番としたのがミソだろう。 伝奇風な物語、狸斎の薬草の知識、忍びの技などうまく絡ませ…

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高橋義夫「狼奉行」。

★3.5  作者の直木賞受賞作「狼奉行」の他「厦門心中」、「東洋暗殺」の中、短編。 「狼奉行」は、東北の小藩で、将来を期待された若侍・祝靭負(いわいゆきえ)が、城下から十数里離れた山代官所の勤務を命ぜられ、そこで起きた物語である。 冬には数メートルもの雪に覆われる厳しい自然の地。山中には数百ものかせぎ(狼)が群れをなしている。 ある冬、彼らの間にかせぎ病(狂犬病)が蔓延し、村人にも被害が出…

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高橋義夫の「刺客百鬼 御隠居忍法 9」。

★3.3 シリーズ9作目。 狸斎の隠居所・五合枡村は山形県の米沢付近とずっと思ってきたのだが、今回その間違いに気づいた。 物語は笹野藩の藩主のご落胤・三之助を伴って江戸へ向かう話である。笹野城下から山越えで鳴子温泉に向かう。 ここで気が付く、調べてみると五合枡村は新庄市あたりの設定だったのである。 更に仙台から海沿いに相馬、岩城、水戸へと。やはりこういう旅ものの設定だと、物語の展開は軽快…

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高橋義夫の「振袖一揆 御隠居忍法8」。

★3.3 シリーズ8作目。 今回は4つの話が1つに繋がっていく物語。 百姓一揆と盗賊団、そして慈雲寺で出家した男、本筋と直接係らない心学の一派。 笹野城下の蔵前河岸の下流にある乱川という土地は、松平貞包3万5千石の領する飛び地、17ケ村で7千石である。 その乱川では藩の圧政に苦しみ、一揆の機運が高揚している。村人の先頭に立つのは立烏帽子を名乗る娘、奥浄瑠璃の「田村三代記」に登場する美しい…

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高橋義夫の「魔物 御隠居忍法7」。

★3.5  シリーズ7作目。 今回も元乱波(らっぱ)の村がからむ伝奇風物語。 狸斎が耕民からの頼みで奉納試合の立会人を引き受けることになった。 笹野城下の3つの道場からそれぞれ3人ずつ出場するのだが、その中に斎木源助という妖剣を使う魔物がいて、12年前の遺恨を引きずっている。 更には陰であやつる大物執政が、奉納試合の名を借りた粛清か。 五合升村の大黒湊の北方に鶏冠の形をした峰・トサカ山の…

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高橋義夫の「御隠居忍法6 恨み半蔵」。

★3.5 シリーズ6作目。 江戸でかっての上司・梶村左太夫が亡くなった。その梶村の家臣・与五郎が厨子を携えて狸斎を訪ねる途中に襲われる。 賊の狙うものは「伊賀同心由来記」なるもの。事件は笹野の医師・清野や川番所をも巻き込み発展していく。とうとう笹野藩の派閥闘争の様を呈する。 狸斎が読み解いた由来記には滅んだとされた服部家のその後が・・・。賊はこれを奪おうとしているのだ。 この巻では狸斎の娘…

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高橋義夫の「御隠居忍法5 亡者の鐘」。

★3.3  シリーズ5作目。 笹野藩の隣、八ヵ村からなる天領の小板橋郷の山の奥、奥寺に出かけた。 奥寺は江戸の東叡山支配で、派遣された住持学頭が一月前に不可解な死を遂げた。それ以来、その寺の鐘は近隣の村人に亡者の鐘といって気味悪がられている。 狸斎の元上司であった梶村左太夫からの依頼で青山俊蔵という若者に同行しての探索である。謎に包まれた村々の住人から敵視され襲われる一行、物語は最後までミ…

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高橋義夫の「御隠居忍法4 唐船番」。

★3.3 シリーズ4作目。 今回は御庭番時代の上司からの依頼による北方探索。ロシアとの密貿易にからむ話だが、中だるみかメモするものもない。 前作であれっと思ったことだが、1作目と登場人物の設定が大きく変化していたこと。そのいい加減さに興味を持った(笑)。 まず、娘の名が夏江から小松に変わっていたこと。そして家督を譲ったのは長女に養子をもらってのはずが、嫡男になっている。 また事件を持ち込…

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高橋義夫の「御隠居忍法3 鬼切丸」。

★3.5 シリーズ3作目。しばらく中断していたが、読み続けることにした。8つの連作短編で短い物語の構成であるため、気軽に楽しめる。 御広敷伊賀者だった鹿間狸斎は40歳で息子の忍に家督を譲り隠居した。娘の奈々江が笹野藩の家臣に嫁入りした国許へ移り住もうというもの。 この時、妻の志津江は「あなたさまのお世話はいたしかねます」と宣言し、尼となって江戸に残った。別居するというのだ。この巻ではその志津…