「風野真知雄」の日記一覧

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風野真知雄 の 耳袋秘帖 南町奉行と大凶寺

★3.2 根岸肥前守登場の新シリーズということで、初巻を読んでみた。 深川の題経寺で不吉な噂が広まっており、大凶寺と呼ばれるようになっている。奉行直属の夜回り同心・土久呂凶四郎と源次は、愛宕下の新シ橋のたもとの柳の下に立つ幽霊を演じる女を調べることになった。この女の次の商売先も題経寺、だがここで命を落とすことに。 物語は、事件を、土久呂凶四郎と源次の動きで語らせ、根岸肥前の勘と洞察力によって…

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不覚にも騙された

恋の川春の町       風野真知雄 帯に、「女に愛されふざけながら幕府に挑んだ男」と、ある。 騙されたと思ったのは、読み終わってからである。 尤も、オイラの勝手な思い込みだから・・・ 「武士ながら戯作者として、人気を博した後、謎の死を遂げた恋川春町の6人の女を通して描く、その情けなく愛おしい、不器用な生きざまが胸に迫る。」 嘘つけ!! 風野真知雄、この方の本を読んだ様な無かった様な、書…

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風野真知雄の「極道大名1」。

★3.2 新シリーズ初作。大名やくざの継続ではあるが10年後、今度は軸足が藩主のようだ。 丑蔵一家の縄張りも南は品川から北は神田川までに拡大しているのには驚いた。母親の辰も健在。 吉宗の将軍就任に関してはさらりといってしまったのは期待外れ。家宣の弟で館林の松平清武や尾張の継友を推すなど軽い展開。物語も大味なものになってくるのは仕方ないのかも。 通春(後の宗春)を久留米藩の養子にという話は実…

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風野真知雄の「大名やくざ8  将軍、死んでもらいます」。

★3.3 シリーズ8作目で第1部完。 江戸に蜜柑むすめを流行らせ、万五郎一家との抗争を制し、公営競馬の設置を働きかけ、将軍綱吉を柳沢邸で暗殺しと、花火だらけの最終回。 「有馬記念」が久留米藩の御殿様と関係あるとは知らなかったなー。 このどたばた物語もそれなりのバカバカしさで面白く読めた。第2部はあるのかしらん。吉宗の将軍就任劇でやるのかなー。 シリーズものはどうしても尻すぼみに陥りやすい…

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風野真知雄の「女が怒れば虎の牙 大名やくざ7 」。

★3.3 シリーズ7作目。 なぜか今回は2つの清算がなされた。一つは虎之助の替え玉・影之助が簡単に暗殺されてしまったこと。 もう一つは最初からこのシリーズを引っ張ってきた敵対勢力のやくざ・鎌倉の万五郎が女房のおしまに殺されてしまったことである。 作者が物語の展開に行き詰まりを感じたのか、別な路線での新たなひらめきを感じたのか、後者を期待したいが・・。 今回登場の平戸藩を核にしようとしてい…

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風野真知雄の「刺客が来る道」。

★3.7 作者の初期の作品。 藩から理不尽な濡れ衣により追放された佐山壮之助一家。更に藩から次々と送られてくる刺客。 一家は江戸の郊外である道灌山近くの家に住むことになる。壮之助は仕官の道は諦め、万年青や朝顔、ナスなどを育て始める。 境遇が極端に変わったことによる家族のとまどい。娘や息子の行く末を思いやる壮之助。やがて時代はペリー来航という激変の時代を迎えてしまうが・・・。 ほっこりした…

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風野真知雄の「大名やくざ6  虎の尾を踏む虎之助」。

★3.3 シリーズ6作目。今回の物語は小ぶり。 前半は江戸城の押し入れで酒を飲みながら喫煙というお粗末な設定。 後半で虎之助は新たな武器を手に入れた。自分にそっくりな影武者をである。参勤交代で己は一足先に久留米入り、国元の反虎之助派への先制攻撃に成功した。 ところが、替え玉を久留米に置いたまま、江戸にもどってくると、そこは有名人、すぐに人目に。この事件をどうやってかわすかが次巻の課題。 …

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風野真知雄の「卜伝飄々」。

★3.3  塚原卜伝が70歳近くになってからの回国修行の物語。7つの短編からなる。 体の衰えは避けられず、できれば戦いを避けたいところ。巷に卜伝の名は天下随一と知られており、今更名を売る必要もない。そういう意味で「飄々」なのであろう。 「鍋の蓋」では、いかりや長介演じる卜伝とドリフのメンバーとのドタバタ劇が思い出される(笑)。 「南蛮狐」で卜伝について回り、戦場荒らしをやっていた五助が、講…

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風野真知雄の「大名やくざ5 徳川吉宗を張り倒す」。

★3.5 シリーズ5作目。 作者の得意な馬鹿馬鹿しい話のふろしきが大きくなっていく。あまり広げすぎるとショボい結末にならざるを得ないが・・・。 もっとも久留米藩は21万石で幕末まで続くのはそのおかげか。 今回登場の紀州藩主・吉宗、虎之助を兄貴と慕ってくる。これを気持ち悪がる虎之助、吉宗と熊野忍軍とのつながりを掴んでしまう。これをネタに将来強請っていくんだろう。 この回の最大のテーマは松の…

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風野真知雄の「江戸城奇譚 猫鳴小路のおそろし屋3」。

★2.8 シリーズ3作目で終り。最後に将門の首をもってきたところは、やっぱりというところだが、わけのわからない話で終わってしまった。 「猫鳴小路のおそろし屋」としたところも、「皆塵堂」ふうの読者の期待感を煽るのが狙いだったようだ。 どうやら最初から余興的な扱いの物語だったのか、それを見抜けなかったのは残念。

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風野真知雄の「酒呑童子の盃 猫鳴小路のおそろし屋 2」。

★3.3 シリーズ2作目。「本能寺の茶筅」「五右衛門の釜」「大石内蔵助の太鼓」「酒呑童子の盃」の連作短編。 例によってお縁の営む骨董屋・おそろし屋の扱う品物にまつわる物語。登場人物とその品物の関係を、新説、珍説、奇説を交えて語っていく。 その物語がどうやって語り継がれたのか、その物が誰の手を経て伝わったのかも明らかにしていないのだがその着想は面白い。 お縁は大奥にいたが、和宮を憚って外に出…

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風野真知雄の「猫鳴小路のおそろし屋」。

★3.3   シリーズ初作。4つの連作。 京橋に近い新両替町1丁目の骨董屋「おそろしや」が扱う品物にまつわる物語。信玄の影武者の話、水戸黄門晩年の悪夢の話、葛飾北斎の右腕図の話、203高地で活躍した佐藤中将の話、というように骨董というよりも、その人物に焦点を当てた逸話的な物語として語られる。 従ってこのタイトルも意味をなしていない。しかも4話目では、店は現代となってしまう。続編(この時点で2…

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風野真知雄の「大名やくざ4  飛んで火に入る悪い奴」。

★3.5 シリーズ4作目。赤穂浪士の生き残り・寺坂吉右衛門をめぐって、上杉方の動きを、藩主の上杉吉憲を脅し封じてしまった。なんと松の廊下で、刀を抜けと上杉吉憲に迫る虎之助、笑ってしまった。 そして鎌倉の万五郎一家と丑蔵一家の勢力争いは激しくなる一方。今回は紀伊国屋に対して、久留米のみかんで2万両を借り出すことに成功するのだが、なんでみかん?よくわからん。 吉原の二升大夫こと梅香は虎之助の策で…

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風野真知雄の「大名やくざ3 征夷大将軍を脅す」。

★3.5 シリーズ3作目。虎之助に用人の田村宋右衛門が報告する。藩の借金がなんと30万両あるという。 虎之助の策は借り先を一箇所にしてしまえ、そしてそこを潰せば返さなくて済むというもの。狙いは紀伊国屋である。 紀伊国屋の弱みは何か、赤穂浪士と密約があったという噂、吉良邸襲撃の後、火をかけて回向院まで燃やしてしまえというもの。 もうひとつ、11年前の赤坂溜池で火消の猪之吉が殺された事件、材木…

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風野真知雄の「大名やくざ2 火事と妓が江戸の華」。

★3.5  シリーズ2作目。久留米藩主に就任したことで、幕閣への挨拶に御礼の引き出物、なんとそこいらで拾ってきたガラクタ、800文。 久留米藩は芝・増上寺を管轄する大名火消し、上野の寛永寺を管轄する加賀鳶を率いる藩主・前田綱紀と競い合う。火事騒ぎの裏にはどうやら暴利を狙う材木商の暗躍が、紀伊国屋文左衛門の姿もちらほら出現する。 「わたしは大名の皮をかぶったやくざなんでさあ」「これぞ情け有馬の…

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風野真知雄の「大名やくざ」。

★3.5 シリーズ初作。久留米藩21万石の分家に3500石の旗本・有馬家があった。その有馬家と近い親族であった300石の旗本・石野家の5男に生まれた虎之助。 妾腹の子で母親は芝、三田、高輪などに勢力を張るやくざの親分「火事の丑蔵」の一人娘・辰である。虎之助は丑蔵の孫として育ったことからやくざそのもの、「水天宮の虎」と呼ばれている。 ところがその虎之助が旗本・有馬家への養子に入り、妻子を得た。…